事務員ゼロのひとり整体院を、13本の自動化が回している——理学療法士のAI活用実録
※ note(2026年7月)に公開した記事の転載です。表記を一部整えています。自動化は公開時の13本から、現在は17本に増えています。
朝6時、私がまだ寝ている間に、昨日の売上・アクセス・広告の数字をまとめた経営レポートがメールで届きます。
8時にはGoogleマップ用の投稿文案。9時には今日のSNS投稿の最終確認メール。私は返信せず施術を続け、夜9時半、投稿は勝手に公開されます。
こんにちは。名古屋でひとり整体院を営む理学療法士の木村です。開業5年目、プログラミング未経験。この記事では、私の店を回している「AIの1日」と、その作り方を公開します。
まず結論:事務員の仕事は、ほぼ全部AIに渡せた
私の店に事務員はいませんが、13本の自動タスクが年中無休で動いています。使っているのはClaude Code(月額のAIツール)だけ。ホームページも予約システムも、これと日本語で相談しながら作りました。「手に職はあるが、経営とパソコンが不安」という人にこそ読んでほしい内容です。
ひとり整体院の1日(AIのタイムライン)
- 06:00 経営レポートが届く(売上・アクセス・広告・SNSの数字)
- 08:00 Googleマップ投稿の下書きが届く(月・木)
- 09:00 今日のSNS投稿のプレビューが届く(返信しなければ承認扱い)
- 日中 私は施術に集中。予約が入れば確定メールが自動送信
- 19:00 Instagram自動投稿(水曜)
- 21:30 X自動投稿(火・木・土)
- 月1回 売上データを会計ソフトfreeeへ自動転記
- 月20日 LINE配信の準備リマインドが届く
- 毎月24日 AIチーム自身の「働きぶり評価レポート」が届く
- 週2回 申請中の補助金の採択発表を見張り
- 年1回 翌年の祝日を調べて予約カレンダーに定休日を一括登録
ポイントは、どの自動化も「AIが作業し、私は拒否権だけ持つ」形にしていることです。全自動にはしません。理由は後半の失敗談で書きます。
作ったもの①:ホームページとAI相談窓口
ホームページはWordPressをやめ、Claude Codeと一から作り直しました。サーバー代は実質ゼロ。Cloudflareという大手ネットインフラ企業の無料枠で、ページの公開もデータベースも個人店の規模なら無料の範囲に収まります。ページにはAIチャット相談を置いていて、営業時間外でも症状の相談に答えてくれます。
さらに、ホームページの「よく読まれている記事」ランキングは、アクセス解析の実データで毎週月曜に自動更新されます。私は何もしていません。
作ったもの②:予約システムと管理画面
お客様がWeb予約すると、確定メールが自動で届き、私のスマホに通知が来ます。裏側には自作の管理画面があり、予約・顧客・売上のダッシュボード、カウンセリング事前フォームのリマインダー送信までここで完結します。
「システム開発なんて無理」と思うかもしれません。私も思っていました。実際は、こういう日本語を打っただけです。
「整体院の予約管理システムがほしい。予約が入ったらお客様に確定メール、私に通知。顧客ごとの来店履歴と売上も見たい。無料で運用できる構成で提案して」
一度に全部はできません。数日かけて、会話を重ねながら育てていく感覚です。
なお、最初の一歩ならもっと簡単な形があります。Googleフォームをお使いなら「回答が来たら回答者に確認メールを自動送信するGoogle Apps Scriptを書いて。初心者向けに設置手順も」と頼むだけで、同じ体験がゼロ円でできます。
作ったもの③:freeeへの売上自動転記
効果が一番大きかったのはこれです。初回は約半年分の売上を一括登録しました。手入力なら数日の作業です。今は月1回、コマンドを1つ実行するだけ。頼み方の骨子はこうです。
「freee APIで、日別の売上リストを現金売上として登録するプログラムを作って。同じ期間に既存の登録があれば中止する二重登録ガードと、登録後にfreee側と手元データの合計が一致するか照合するチェックも付けて」
お金のデータをAIに任せるコツは、作業より「答え合わせ」に手をかけることです。二重登録ガードと照合チェックのおかげで、数字のズレは60円単位まで検出できています。
作ったもの④:SNSの「承認式」自動投稿
XとInstagramは、投稿ネタを事前にAIと20本作って貯めておき、投稿日の朝9時に「今日はこれを投稿します」というメールが届く仕組みです。私が返信しなければ夜に自動投稿。「STOP」と一言返信すれば止まります。
X APIは従量課金ですが、月の上限を5ドルに設定してあるので暴走しても数百円です。実費は月800円ほど。
この仕組み、外注したら月いくらか
ここで一度、お金の話を整理します。私が自作した仕組みを外注やサービス契約でまかなうと、世間の相場はだいたいこうです。
- ホームページの制作費(初回・一括):100,000〜500,000円
- ホームページの保守管理費:月5,000〜30,000円
- 予約システムの月額利用料:月5,000〜15,000円
- 記帳代行(会計ソフトへの入力):月10,000円前後〜
最初に制作費が一括でかかったうえで、合計すると月2〜5万円、年間で30〜60万円クラスの固定費です。もし今これらを月額で払っているなら、Claude Codeの月額数千円〜と見比べてみてください。ひとり事業にとって固定費の軽さは、そのまま生き残る力です。
ただし、2つ正直に書きます。ひとつ、私も作るのに時間はかけています。施術の合間や夜にAIと対話した時間は、タダではありません。ふたつ、税理士さんの本当の価値は申告や節税の相談にあって、私が置き換えたのは「転記という単純作業」の部分だけです。専門家に頼むべきものと、AIに任せられる作業を分ける。この線引きこそ、いちばんの節約術だと思っています。
なぜ、こんなことが可能なのか
種明かしをします。ChatGPTのようなチャットAIとClaude Codeの違いは3つです。
- パソコンの中のファイルを直接読み書きできる(だから売上データを会計ソフトへ運べる)
- 事業のルールや過去の失敗を「記憶ファイル」として残せる(だから毎回ゼロから説明しなくていい。過去の事故の教訓が、今の設計に反映され続ける)
- プログラムを書いて実行し、自分自身を定期実行として予約できる(だから私が寝ていても動く)
ただし、道具の性能だけでは半分です。私はこのAIに、事業と専門知識の全部を渡しています。日々の売上、書いてきた記事、18年分の匿名化した症例記録、大学院で読み込んだ文献。AIの答えの質は、渡したデータの質と量で決まります。同じツールを契約しても、渡す資産がなければ同じ結果にはなりません。
逆に言えば、あなたが何年も積んできた仕事の記録は、AI時代の一番の資産です。それを「AIが読める場所」に置くことから、すべてが始まります。
※注意:顧客・患者の情報を渡す場合は、名前などを外した匿名化が前提です。私も個人が特定できる情報はAIとの会話に出さないルールにしています。
失敗談:全自動は静かに壊れる
いいことばかりではありません。以前、完全自動投稿に挑戦して、止まっていたことに1ヶ月気づかなかった失敗があります。自動化は「動いて当たり前」になった瞬間、壊れても誰も気づかない。だから今は、三重の見張りにしています。
- 毎朝メールが届く形にする(届かない=壊れたと気づける)
- 朝のレポートが未送信なら、別のタスクがそれを検知して自動で再送する
- 月1回、AIチーム自身に「今月の働きぶり」を報告させる
自動化とは作業をなくすことではなく、確認だけに減らすことでした。
安全のための3ルール
- パスワードやAPIの鍵はプログラムに直接書かない(「安全な管理方法で」と頼めば正しい形を提案してくれます)
- お客様の個人情報は外部に出ない場所だけに保存し、AIとの雑談に顧客名を出さない
- 新しい仕組みを作ったら「この設計のセキュリティ上の弱点を指摘して」とAI自身に監査させる
今日から始めるなら(最初の2週間ロードマップ)
先に費用の話。Claude Codeは月額20ドル(約3,000円)のプランから使えます。パソコンはMacでもWindowsでも大丈夫です。
1日目:入れて、雑談する。最初の依頼は「私は◯◯業のひとり事業主です。パソコンは得意ではありません。あなたに何を手伝えるか、私に質問しながら一緒に整理して」で十分。AIの方から質問してくれます。
2〜3日目:集計を頼む。「このスプレッドシートの売上を月別にまとめて」。自分の実データで一度成功すると、見える景色が変わります。
1週間目:Googleフォームの自動確認メール(ゼロ円・30分)。これが動いた瞬間、あなたの店にも「自動」が生まれます。
2週間目:自動化する仕事を1つ選ぶ。基準は3つ——①毎週やっている ②手順が決まっている ③間違えても致命的でない。この3つが揃う仕事から「朝に確認メールが届く承認式」で。お金と顧客情報に触る仕事は、慣れてから最後に。
つまずいたら:エラーは赤い文字を全部コピペして「直して」でいい。分からない言葉は「専門用語を使わず説明して」と言っていい。一度に全部作らない。1つ動いてから次へ。
最後に
私の商品は18年磨いた手技で、これはAIに代わりができません。だからこそ、それ以外の全部を任せると決めました。月数千円で、休まない事務員と、毎朝数字を報告してくれる参謀が手に入る。手に職のひとり事業主にとって、これを使わない理由が見つかりません。
同じ「ひとり整体院」のオーナー向けに、導入支援もしています
「うちの院なら何から始めるべきか」を一緒に整理するところから。ゴールは、私がいなくてもあなたがひとりで回せている状態です。
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